事件番号:JP2017−0002 裁 定 申立人: (氏名/名称)オタズ・ジャパン株式会社 (住所)東京都品川区東五反田五丁目15番11−2F 代理人:弁護士 太田 知成 弁護士 新谷 美保子 弁護士 尼口 寛美 登録者: (氏名/名称)関 慈慶 (住所)東京都中央区銀座6−12−13 大東銀座ビル2階 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン 名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理 方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書及び提出された証拠に基づいて審 理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。 1 裁定主文 ドメイン名「OTAZUJEWELRY.JP」の登録を申立人に移転せよ。 2 ドメイン名 紛争に係るドメイン名は「OTAZUJEWELRY.JP」である。 3 手続の経緯 別記のとおりである。 4 当事者の主張 a 申立人 申立人は、オランダ法人OTAZU B.V.(以下、関連会社を含め「オタズ社」という。)が 運営するジュエリーブランド「OTAZU」(以下「申立人ブランド」という。)に係る商標「OTAZU」 (国際登録第795584号、以下「本件商標」という。)の専用使用権者であり(甲9)、 申立人ブランドの我が国における独占的ディストリビューターである(甲3)。申立人は、 本件商標をその構成中に含むドメイン名「OTAZUJEWELRY.JP」(以下「本件ドメイン名」と いう。)を、本件商標の名声を利用し、不正の利益を得る目的で取得し、使用していると主 張する。申立人によれば、本件ドメイン名は、本件商標と誤認混同を起こすほど類似し、 登録者は本件ドメイン名について正当な権利を有していない、そして本件ドメイン名は不 正の目的で登録され且つ使用されている。 従って、申立人は、本件ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。 b 登録者 登録者によって答弁書は提出されなかった。 5 争点および事実認定 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則に ついてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・文書および審問の結果 に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理 に従って、裁定を下さなければならない。」 方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図してい る。 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利又は正当な利益を有する商標その他表示と 同一又は混同を引き起こすほど類似していること (2)登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録又は使用されていること (1)同一又は混同を引き起こすほどの類似性 本件ドメイン名「OTAZUJEWELRY.JP」において、「.JP」は日本を意味するトップレベルド メインであって類否判断には影響しない部分である。 「OTAZUJEWELRY」の部分において、「JEWELRY」の文字は、我が国の一般需要者にも理解 できる「宝石、アクセサリー」等を意味する英語の普通名称であること、更に「OTAZU」の 文字が特定の意味を有しない造語と看取されることから、当該部分は、「OTAZU」と「JEWELRY」 に外観及び観念上、分離観察できるといえる。普通名称部分は常に称呼上無視できるわけ ではないが、当該部分を本件商標と対比した場合、造語と看取される「OTAZU」の識別力が 強いため、本件ドメイン名の当該部分からは、「オタズジュエリー」の称呼のほか、「オタ ズ」の称呼も生じるといえる。よって、「オタズ」の称呼の本件商標とは、称呼上類似する 商標である。 ここで、本件商標がアクセサリー類(ジュエリー)について使用されており、本件ドメ イン名に係るウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)でも同種商品(ジュエリ ー)が販売されていることから、本件ドメインの「JEWELRY」の文字は、取扱商品分野を表 示する部分と看取される。従って、需要者は、本件ドメイン名の「OTAZUJEWELRY」の部分 から、本件ウェブサイトが本件商標に係る商品(ジュエリー)の専用サイトであるかのご とく誤認するおそれがある。 よって、本件ドメイン名は、本件商標と混同を引き起こすほど類似するといえる。 (2)権利又は正当な利益 申立人は、オタズ社が商標権者である本件商標(国際登録第795584号)の専用使 用権者である(甲9)。本件ドメイン名の登録者が代表取締役であるロックワン株式会社 (以下「ロックワン」という。)の前身であるマニフォールドリアリティ株式会社は、20 12年1月20日付でオタズ社のサプライヤー(RO2 BV.)との間で、独占的ディストリビ ューション契約(以下「旧ディストリビューション契約」を締結していたが(甲6)、債務 不履行により、オタズ社から2014年2月27日に同契約を解除され(甲7及び甲8)、 以後、申立人(旧商号アールオーインターナショナル株式会社)が本件商標に係るブランド の独占的ディストリビューターとなっている(甲3)。 よって、上記解除日以降、ロックワン及び登録者は、申立人ブランド及び本件商標につ いて何らの権限も有していない。 (3)不正の目的での登録及び使用 前記のとおり、ロックワン及び登録者は、申立人ブランド及び本件商標について何らの 権限も有していないところ、登録者は、旧ディストリビューション契約が解除された後の 2014年3月11日に、前記のとおり本件商標と類似する本件ドメイン名を登録した(甲 1)。登録者は、旧ディストリビューション契約が解除されているにもかかわらず、本件ド メイン名に係るウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)において、引き続き申 立人ブランドの商品を販売するほか(甲13)、現在でも登録者又はロックワンが申立人ブ ランドの独占的ディストリビューターであるかのごとく需要者に誤認させるおそれがある 記載をしている(甲13の8)。加えて、本件ウェブサイトにおいて、「Rodrigo New York」 という登録者が独自に取り扱うブランドと申立人ブランドが関連性があるかのごとく需要 者に誤認させるおそれがある表示をするなど、申立人ブランドの需要者を登録者独自のブ ランドに誘引するために本件ドメイン名を登録かつ使用していると推認される。 よって、登録者は、本件ドメイン名を、申立人ブランド及び本件商標の名声を利用し、 不正の利益を得る目的で取得し、使用していると判断できる。 6 結論 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録された本件ドメイン名 「OTAZUJEWELRY.JP」が申立人が専用使用権者である本件商標と混同を引き起こすほど類似 し、登録者が、本件ドメイン名について権利又は正当な利益を有しておらず、登録者のド メイン名が不正の目的で登録され且つ使用されているものと裁定する。 よって、方針第4条iに従って、本件ドメイン名「OTAZUJEWELRY.JP」の登録を申立人に 移転するものとし、主文のとおり裁定する。 2017年5月30日 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル 西村 雅子 単独パネリスト 別記 手続の経緯 (1)申立書受領日 2017年3月30日(電子メール)及び3月29日(書面) (2)手数料受領日 2017年3月29日 申立手数料の受領確認 (3)ドメイン名及び登録者の確認 2017年3月30日 JPRSへ照会 2017年3月30日 JPRSから登録情報の回答 回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、JPRSに登 録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等 (4)適式性 日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2017年3月31 日に、申立書が処理方針と規則に照らし申立書が適合していることを確認した。 (5)登録者への通知日及び内容 1) 申立書送付日(手続開始日) 2017年3月31日(電子メール及び郵送) 2) 申立書及び証拠等一式 3) 答弁書提出期限 2017年4月28日 (6)手続開始日 2017年3月31日 センターは、2017年3月31日に申立人及び登録者には電子メール及び郵送で、 JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。 (7)答弁書の提出の有無及び提出日 センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2017年5月1日 に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、電子メール 及び郵送で申立人及び登録者に送付した。 (8)パネリストの選任 2017年5月10日 申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。 中立宣言書の受領日:2017年5月16日 パネリスト:弁理士 西村 雅子 (9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知 2017年5月1日 JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知 申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知 裁定予定日:2017年5月30日 (10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し 2017年5月10日(電子メール及び郵送) (11)パネルによる審理・裁定 2017年5月30日 審理終了、裁定。